就職活動をしている間には、「売り手市場」という言葉を耳にする機会があります。ただ、売り手市場について正確に理解しておけなければ、いつまで経っても内定をもらうことができない可能性もあります。売り手市場についてしっかりと押さえておき、就職活動に役立てていきましょう。
この記事では、売り手市場とはどのような状態のことをいうのかを紹介し、売り手市場のメリットや問題点についても解説していきます。
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目次
そもそも売り手市場とは?有効求人倍率も押さえておこう
就職活動をしているときには「売り手市場」や「買い手市場」という言葉を耳にします。これらの言葉はニュースなどでも見聞きすることが多いため、就職活動を続けていくうえで「どのような状況を指しているのか」を押さえておくことはとても大切です。
まず、売り手市場とは、「売り手」である新卒学生や転職者のほうが有利な状態を指しています。就職活動の現場で売り買いされるものは労働力です。つまり、売り手市場と呼ばれる状況では、企業側は労働力が不足している状況を指しています。
そのため、企業側は労働力が不足しているぶん、そのなかでもできるだけ良い人材の確保を目指していると言えるでしょう。これらのことから、新聞やニュースなどで「売り手市場だ」と伝えているときには、新卒学生や転職者が有利な状況であると理解できます。
一方で、売り手市場と対比する形で用いられているのが、買い手市場という言葉です。買い手市場の場合は、求人数よりも求職者数のほうが多い状態のことをいいます。
このような状況でも、企業側は新卒学生・第二新卒者などの応募者のなかから、当然より優れた人材を確保することを目指すため、企業側が有利で、求職者にとっては不利な状況となるのです。
加えて「今は売り手市場か、それとも買い手市場か」ということを判断するときには、有効求人倍率が用いられるケースが多く見られます。有効求人倍率とは、有効求人数を有効求職者数で割ることによって算出された数値のことをいいます。
つまり、有効求人倍率とは、求職者1人あたりに対して何件の求人があるかを示したものと言えるでしょう。有効求人倍率に関しては、厚生労働省が毎月計算して発表している公的な数値です。そのため、就職活動をするときには、参考にしてみることがポイントです。
有効求人倍率の中間値は1です。したがって、有効求人倍率が1より大きくなれば、そのぶんだけ求人数も多くなることから、働き手が不足した状態となります。逆に、有効求人倍率が1より小さくなると求職者が増えるため、就職が難しくなります。
つまり、有効求人倍率が1を超えたときが、売り手市場であると言えます。具体的には、2008年にはリーマンショックが起こったため、その直後の2009年の有効求人倍率は0.47となりました。
しかし、それ以降、有効求人倍率は右肩上がりに推移していき、2017~2018年にはバブル期を超える数値となっています。
知っておこう!売り手市場のメリット
売り手市場であることには、いくつかのメリットがあります。まず、内定がもらいやすいという点は、新卒学生や転職者にとって最大のメリットと言えるでしょう。売り手市場になると、企業によっては人手不足が顕著に見られるケースがあります。
そのため、人材の不足が直接的な原因となり、積極的に人材を募集している企業が多く見られます。売り手市場では、企業ごとの倍率が下がっていることから、応募者が受かりやすい状況となっているのです。
たとえば、建設業界や介護業界、飲食業などでは、人手不足が目立つ業界と言えます。加えて、一般的にこれらの業界は離職率が高いという問題があることから、企業によっては慢性的な人手不足に悩まされているケースも少なくありません。
これらのことからもわかるように、売り手市場では大企業への就職を希望する場合でも、例年と比較すると内定をもらえる可能性が高いと言えるでしょう。
次に、売り手市場になると、仕事の選択肢が広がるというメリットが見られます。人材不足の企業が増加傾向となる売り手市場では、求人数も多くなります。
したがって、新卒学生や転職者はそれぞれの企業をじっくりと時間をかけて検討することができるだけでなく、仕事の選択肢もぐっと広がるという点は大きなメリットです。買い手市場では選択肢になかった企業や職種でも、売り手市場になると新卒学生や転職者は応募する可能性があります。
さらに、売り手市場では、給与をはじめとするさまざまな条件面を、ほかの企業よりも良くしようとする企業が増加する傾向があります。これは、応募者がほかの企業へと流れてしまうのを防ぐためです。
売り手市場であまりに条件面を低くしてしまうと、企業によっては人材を確保することすら難しくなってきます。条件面を見直し、必要に応じて改善させることは、人材を確保するうえでも重要なことと言えるでしょう。
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売り手市場の問題点
どうしても内定が欲しい新卒学生や転職者にとって、売り手市場は理想的な状況と思われがちです。しかし、売り手市場にも問題点やデメリットはあります。まず、売り手市場では、新卒学生や転職者をはじめとする求職者側と求人側のニーズが一致しないケースが見られます。
このような状況は「雇用のミスマッチ」と呼ばれており、売り手市場では深刻な問題のひとつとなっています。たとえば、内定が出たために、本来の希望ではない企業に就職してしまうケースです。
このようなケースでは、もともと入社意欲が低いという問題が見られます。加えて、企業研究を熱心に行っていなかったがために、入社後実際に仕事をしてみると「思っていた仕事と違った」などの理由から、退職につながる恐れがあります。
求職者と企業のニーズが一致していないと、企業としてはいつまで経っても人材不足の問題を解消することはできません。
次に、売り手市場で内定を複数の企業からもらったときには「どこの企業に就職するのが最も良い選択か」という点で迷うものです。最終的に、就職する企業はひとつに絞る必要があるため、企業選びに悩むのも無理はありません。
しかし、複数社から内定をもらい、最終的に企業を選ぶ段階になると、給与や福利厚生などの条件面に着目してしまう人も多く見られます。
条件面だけで就職先を決めてしまうと「自分が本当にやりたいことかどうか」を見失ってしまいます。就職活動中に複数の企業から内定をもらったときには、企業研究をしっかりと行ったうえで「自分がやりたいことが実現できる会社か」という点をしっかりと考えてみることがポイントです。
さらに、売り手市場の場合、企業によっては人材不足の状態が継続しているケースもあります。仮に、条件面が魅力的な企業に就職したとしても、慢性的な人材不足の問題がある企業では、入社直後に膨大な残業を強いられる恐れがあるでしょう。
そもそも、企業は少し人手が足りないからといって、新たな人材を雇うようなことはしません。
そのため「残業ばかりでいつも職場の雰囲気が悪い」や「仕事のやり方を丁寧に教えてくれない」などの問題につながりやすいという点は、売り手市場におけるデメリットといわざるをえないのです。
ほかにも、大手企業や有名企業の場合、売り手市場であっても内定をもらうのは非常に難しいのが現実です。ただ、ニュースなどを見ていると「今年は売り手市場だから、大手に就職できる可能性がある」などの意見も見られます。
しかし、売り手市場でも、大手企業・有名企業は人気が高いため、就職活動中に有名企業ばかりを受けてしまうのは危険です。「自分はどのような仕事がしたいか」を中心に考えて、企業選びの視野を広げていきましょう。
売り手市場はいつまで続くか
多くの就活生にとって、売り手市場は有利な状況であると言えます。しかし、売り手市場という言葉を過信するあまり、就職活動の開始時期が遅すぎたり、真剣に取り組まなかったりすると「卒業目前であるにもかかわらず、内定をまったくもらえていない」などの事態を招く可能性があります。
加えて、売り手市場であっても、すべての人が希望する企業に就職できるわけではありません。そのため、売り手市場かどうかという問題に惑わされることなく、自分がしたいことが実現できる就職先を見つけることが重要なのです。
一般的に、景気と企業の採用意欲は連動しているといわれています。具体的に、2008年のリーマンショック以降には就職氷河期が到来したという事実があります。2009年には有効求人倍率は落ち込み、そしてそれ以降は数値が右肩上がりとなり、売り手市場が続いているのです。
ただし、売り手市場はこのままずっと続くわけではありません。売り手市場に関しては、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックが節目となり、その後景気が下降するのではないかと予想されています。東京オリンピック・パラリンピックまでは「オリンピック需要」と呼ばれるように、建設需要が高くなり、これが日本の景気を支える要因のひとつです。しかし、2020年が終わると、建設需要がなくなるとの見方から、業界によっては売り手市場から買い手市場へと変わっていく可能性もあります。
また、リクルートワークス研究所の調査によると、大卒・院卒の場合2019年卒は+10.7ポイント、2020年卒は+7.9ポイントという結果となっています。このデータからは、採用が高止まりしているという事実が見て取れるでしょう。
そのため、2022年卒の学生は、ニーズを正確に把握することが欠かせません。これらの理由から、転職する場合には適切な時期を見極めることが重要なポイントとなります。2020年以降には、業界によって売り手市場と買い手市場の問題が顕著に見られるケースもあるでしょう。
たとえば、建設業界に関しては、首都圏のマンション建設などのオリンピック需要は終了するものの、日本は震災が多い国であることからまだまだ建設の需要はあるといわれています。また、日本では外国人労働者を積極的に採用していることから、2020年以降もこの状況は続くものと予想されています。就職・転職活動をする場合には、その時々の景気にも目を向けることが大切です。
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いつまで続くかわからない売り手市場に惑わされないように
売り手市場に関しては、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックがひとつの節目となるという見方があります。
しかし、売り手市場がいつまで続くかという問題について、正確に予想することはできません。そのため、売り手市場か買い手市場かにかかわらず、適切な方法で就職・転職活動に取り組むことが大切です。
複数の企業から内定をもらったら「自分が本当にしたいことは何か」についてしっかりと考えてみましょう。
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