学生にとって就職活動のゴールは内定を得ることですが、内定の前には「内々定」というものもあり、その違いが気になる人も多いようです。
内定と内々定は、同じく企業から通知されるものですが、法的な意味や拘束力が全く違います。そのため、内々定と内定ではもらった後の対応の仕方も違いますので正しく理解しておくことが大切です。
内々定と内定について、就活生がきちんと知っておくべき情報について紹介します。
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内定、内々定の定義について
最初に「内定」「内々定」といった言葉の定義や使い方について確認しましょう。
「内定」とは、企業が採用を前提に就職希望者と結ぶ労働契約です。
これは入社時期を定めた労働契約を意味し、正式には「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれます。名称中に「始期付」「解約権留保付」という言葉が入っている通り、労働契約が始まる時期が決まっていること、そして双方が労働契約の解約権を留保している状態であり、解約が可能であることを意味します。
ただし解約については、正式な契約であるため労使の双方がルールに基づいて行うべきとされています。
「内定が出る」ことと「内定が決まる」は別の意味ですので注意が必要です。学生のなかでは混同して使われることもありますが「内定が出る」は「労働契約を結びたい旨を企業側が通知すること」を意味します。
「内定が決まる」とは「労働契約を結ぶことにあたり、双方が合意すること」です。労働契約に合意した後、つまり内定が決まった後は、労働条件や契約内容の変更は基本的にはできませんので、事前に疑問点があれば解消したり交渉したりしておくことが大切です。
次に内々定ですが、内々定は内定の前に企業が行う、採用を前提とする口約束です。口約束ですので、法的な拘束力は特にありません。
経団連の「採用選考に関する指針」では、「正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降とする。」との定めがあり、その方針に従う企業は10月1日以降に内定を通知します。
しかし、選考活動は6月1日以降から行うことが可能となっているため、企業は選考を行った結果、選考活動の終了と雇用を希望する旨を伝えるために内々定を出すのです。
内々定は正式な労働契約ではなく、誓約書や念書のような書類があったとしても法的な拘束力はなく、あくまで心理的な拘束以上の意味を持ちません。
内々定という言葉の使い方で気を付けたいのが「複数内定」という言葉です。内定が正式な労働契約である以上、勤務時間などの就労条件が重なるなら複数の労働契約を結ぶことはできません。複数内定と表現される場合、正しくは複数の内々定もしくは内定の通知が出ている段階です。
新聞やニュースでも「複数内定が出ている」と言われることがありますが、内定が通知される10月に入るまでは、ほとんど「内々定」の意味で使われています。
内定と内々定、出るのはいつころ?
毎年、特定の時期になると内定や内々定に関するニュースや情報が、メディアやインターネット上に増えてきます。こうしたものを目にすると焦ってしまう人も少なくありません。この内定や内々定が出るのはいつ頃なのか、正しく理解していれば焦ることはありませんし、ペースを考えながら就職活動を行うことができます。
経団連の「採用選考に関する指針」では、企業が行う採用活動の開始時期について、広報活動を「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」、選考活動を「卒業・修了年度の6月1日以降」と定めています。
そして、内定は10月1日以降です。そのため、内定は10月1日に出ることが多く、この日にはさまざまな企業で内定式が行われています。内定式は「内定者が集まる式典」ではなく、実際には「内々定者を対象に正式な内定通知を渡すことを目的として実施される式典」です。
内定者を集めるのは、この日に採用内定書の受け取りや承諾書の提出を行わせ、実際の労働契約を進めるためであり、内定を祝うためではありません。
多くの企業では10月1日に内定が出ますが、採用活動のスタートを遅らせたり、選考が長引いたり目標の採用数に至らなかった企業では内定通知を出すのが遅れることがあります。
それでも、できるだけ早く内々定者を内定にステップアップさせるべく、10月1日以降に順次内定が出るのが一般的です。内々定は、ルール上は選考活動の開始日から出すことができます。
そのため、6月以降に内々定が出るのが一般的です。最近は選考過程も多様化しており、人間性や実力を十分に把握しているインターン生などの人材を対象に、選考過程を大幅に省いて6月初旬に内々定を出すケースも出てきています。
一般的な企業では、6月1日から2~3回の選考過程を経ますので、6月下旬や7月上旬には内々定が出ることが多いです。
ただし、あくまでこれは経団連の方針を遵守する企業の話です。ベンチャー企業や外資系の企業、また一部の国内企業(金融系やIT系に多い)ではこうした時期よりずっと早く内々定や内定を出すこともあります。
それでも多くの大企業の採用活動は経団連のルールに基づいて行われる、または意識して行われていますので、この時期は就活生も覚えておいたほうが良いでしょう。
学生から人気の大企業の多くが経団連に加盟していることもあり、多くの企業が内々定を先んじて出していても、最終的に就活生が就職活動を終えるのは大企業が内々定を出す6月以降です。
経団連の非加盟企業は、大企業の採用が終われば優秀な学生との接点が減ることを理解しているため、採用活動を早めに始めて内々定を出すようにし、その後も面談やインターン、研修などで接点を設け、学生との関係構築に取り組みます。
また、逆に採用活動で大企業と時期が重なるのを避けて、夏以降から採用活動を始める企業もあります。
いわゆる夏採用ですね。
夏採用については以下の記事をご覧ください。
この頃にはすでに多くの学生が就活を終えていますので、こうした企業では選考ステップも少なくなり、8月下旬や9月頃に内々定が出ます。
遅れて採用活動を始める企業でも、学生が内定先を決定する10月までに内々定を出す動きが基本です。10月以降は募集も少なくなり内々定も必要が無くなることから、最終選考が終われば基本的にすぐ内定が通知されます。
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内定や内々定のよくある疑問にお答えします!
就活を行う学生は、内定や内々定に関して疑問に感じたり気になったりする事項も多いものです。内定・内々定に関して、よくある疑問に対して答えていきます。たとえば「内定や内々定の辞退の仕方はどうしたら良いか?」について知りたいという人も多いです。
複数の内定や内々定を持つことも増えているからこそ、適切な辞退の方法は知っておいて損はありません。まずタイミングについては、内定や内々定の取り消しはできるだけ早く行うのが基本的なマナーです。
内々定であれば法的な拘束力はありませんので、辞退したい旨を採用担当者に伝えさえすれば相手の承諾の有無を問わず取り消したことにしてもトラブルにはなりませんが、話し合いの余地を残し円満に辞退するためにも、電話もしくは直接会って伝えるのが望ましいです。
内定自体の詳しい方法は以下の記事もあわせてご覧ください。
内定を承諾した後は、法的拘束力が伴い、内定の辞退は一般的に言う「退職」と同じ扱いになりますので、退職する日(この場合は入社日)の2週間前には連絡し、口頭だけでなく書面やメールなど残る形でも伝えるのが良いでしょう。
「内定や内々定が取り消される場合はあるか?」という疑問を持つ方もいますが、企業側から一方的に内定を取り消されるケースはほとんどありません。ただし「学校を卒業できなかった」「病気やケガなどの理由で働くことが長期的に難しくなった」「内定者に犯罪行為があった」「企業の業績が大きく悪化し雇用が難しくなった」などのケースで内定が取り消される場合はあります。
内定や内々定の解約理由は「一般的に考えて妥当と考えられる」というのがポイントです。逆に多くの人が不条理に感じるような理由により、企業側が一方的に内定を取り消すことはできません。
「内定を複数もらった場合どうやって決めたらいいのか?」と悩む人も多くなっています。内々定をもらうタイミングで、入社に関する念書などにサインを求められることもありますが、正式な内定通知書に合意しない限り法的拘束力は発生しませんので、その時点で他の企業を諦める必要はありません。
複数の企業から内々定や内定通知をもらった場合、最終的に一社に絞り込む必要がありますが、労働条件や職種、勤務地などから自分の基準を作って判断することをおすすめします。ただし、企業側が内定への合意に期限を定める場合もあるため、内定通知が来る前から早めに絞り込んでおいて、辞退の連絡をすべき企業には早めに連絡するようにしましょう。
「内定や内々定をした企業への再応募は可能?」かは、企業の状況によります。企業が一度内定や内々定を出している以上、企業に合う有能な人材として評価されていることは間違いありません。
ただし、企業の毎年の採用枠は決まっており、よほどのことが無ければそれ以上の人数を採用することはないため、かなり難しいです。逆に採用数を満たしていない場合には、年度の終わり頃まで継続して募集が行われている場合もあり、その場合は受け入れてくれる可能性もあります。翌年度になると新卒または第二新卒扱いになり、他の志望者と比較されながらの選考となるでしょう。
「中途採用では内々定はないと言うが、第二新卒ではどうなのか?」についても解説しておきます。
中途採用で内々定がないのは、学生のように卒業を待つ必要もなければ、経団連による定めもないため、互いの条件が合い次第、すぐに働いてもらうことができるからです。
第二新卒については内々定があります。中途採用と同じように採用を行うケースもありますが、多くは社会人としての新人研修が必要です。
そのため、教育上の都合から他の新卒者と内定・入社時期を揃える目的で内々定とするケースが多くなっています。内々定が出てから、アルバイト待遇で春まで働いてから正式に入社するケースも多いです。
内々定や内定について正しく知っていてこそ安心して就活できる
就職活動を行い、選考を通過すると内々定が通知されますが、内々定はまだ就活のゴールとなる内定そのものではありません。
内定は正式な労働契約であり、法的な拘束力を伴うものですので、しっかり考えて合意することが大切です。内定と内々定の違いや、その通知される時期、対応について正しく理解していないと、思わぬトラブルになることがあります。
正しい理解のもと、安心して就職活動を行いましょう。
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